「アメリカからハーレーを輸入したら、どうやって日本で走れるようになるの?」
そんな疑問を抱くライダーのために、今回は実際の輸入登録プロセスを体験ベースで完全解説します。
この記事では、アメリカの港を出発した1台のハーレーが、日本のナンバーを取得して公道に出るまでの流れを、リアルな時間軸で追いながら、各ステップの詳細や注意点をお伝えします。
ステップ1:アメリカ出発前の確認作業(VINとEPA/DOT認証)
購入した車両の基本情報
今回輸入したのは、2021年式ソフテイル・ブレイクアウト114。
アメリカ現地の提携ディーラーで購入しました。輸入手続きの第一歩は、車両の基本情報と必要な証明書類を確認することです。
必須確認事項
- VIN(Vehicle Identification Number)
車体番号で、車両の識別に必要な情報です。登録時に必須であり、これが間違っているとすべての手続きがストップします。 - EPA(環境保護庁)証明/DOT(運輸省)証明
- EPA証明:アメリカの排ガス基準を満たしていることを示す証明書。
- DOT証明:アメリカの安全基準(ライトやウインカーなど)を満たしていることを示す証明書。
今回の車両は正規USモデルだったため、これらの基準をクリアしており、以下の特徴が確認できました:
- EPAプレート:フレーム右下にリベット止めされている。
- DOT刻印付きヘッドライト:標準装備。
注意点
EPA/DOT証明がない車両を輸入すると、改善費用が高額になるだけでなく、最悪の場合、日本で登録できないリスクがあります。購入前に必ず確認しましょう。
ステップ2:アメリカから日本へ輸送(海上コンテナの中へ)
輸送の流れ
現地倉庫で簡易点検を行った後、ロサンゼルス港から横浜港へコンテナ便で輸送しました。輸送方法はコンテナシェア便(複数台の車両を1つのコンテナにまとめて輸送)を選択。費用は約25万円でした。
輸送時のポイント
- 車両の固定
- バイクスタンドと固定ベルトを使用して、車体を完全に固定。輸送中の揺れや衝撃による損傷を防ぎます。
- 輸送保険の加入
- 海上輸送中の破損や紛失に備えて、約3万円の保険に加入しました。
- 輸送期間
- アメリカから日本までの輸送期間は約3〜4週間。
必要書類の発行
船が出発すると、以下の重要書類が発行されます:
- B/L(船荷証券):輸送中の車両を証明する書類。
- インボイス(売買明細書):車両の購入価格を記載した書類。
これらは通関手続きで必要となる“命の書類”です。紛失しないように注意しましょう。
ステップ3:日本到着と通関手続き
横浜港での通関
車両が横浜港に到着すると、通関業者の立ち合いのもとで輸入申告を行います。ここでは、税関に必要書類を提出し、関税と消費税を支払います。
提出書類一覧
- インボイス:車両価格が記載された売買明細書。
- B/L(船荷証券):輸送中の車両を証明する書類。
- 譲渡証明書:車両の所有権を証明する書類。
- 車体写真:車両の状態を確認するための写真。
- EPA/DOT証明:環境基準・安全基準を満たしていることを示す証明書。
関税と消費税の支払い
税関では、車両価格に基づいて以下の税金を支払います:
- 関税:車両価格の3.0%
- 消費税:車両価格の10%
関税例
車両価格が300万円の場合:
- 関税:9万円
- 消費税:30万円
- 合計:約39万円
通関後の流れ
税金を支払い、**輸入許可書(通関証明書)**を取得します。その後、港の保管ヤードで車両を引き取り、車体の損傷チェックを行います。これで、車両が正式に日本の土を踏むことになります。
ステップ4:改善作業(日本の保安基準への適合)
アメリカ仕様のハーレーは、そのままでは日本の保安基準に適合しないため、登録前に改善作業を行う必要があります。
主な改善内容
- ヘッドライトの光軸変更
- アメリカ仕様の右通行用から、日本の左通行用に調整。
- km/hメーターへの交換
- アメリカ仕様のmph(マイル表示)を、日本仕様のkm/h表示に変更。
- サイドリフレクターの追加
- 日本の基準に合わせて反射板を追加。
- ウインカー点滅間隔の調整
- 日本の基準に適合する点滅速度に変更。
- 騒音・排ガスチェック
- 日本の環境基準に適合するように調整。
費用と期間
- 費用:部品費+作業費で約8〜15万円
- 期間:1〜2日程度
ステップ5:予備検査(登録前の車両検査)
改善作業が完了したら、国土交通省指定の検査場で予備検査を受けます。この検査に合格することで、ナンバー取得に必要な「予備検査証」が交付されます。
検査内容
- ライト・ウインカー・ホーンの動作確認
- 車体番号・エンジン番号の確認
- 排ガス・騒音基準の測定
費用
- 約30,000円〜50,000円(改善作業と同時に行う場合が多い)
ステップ6:陸運局登録とナンバー交付
予備検査証を取得したら、陸運局で登録手続きを行います。ここで正式にナンバーが交付され、公道走行が可能になります。
手続きの流れ
- 登録申請書の提出
- OCRシートに必要事項を記入して提出。
- 自賠責保険の加入
- 25ヶ月分の保険料を支払います。
- 税金の納付
- 自動車税(約6,000円)を納付。
- ナンバー交付
- ナンバー交付窓口でナンバープレートを受け取ります。
所要時間
- 手続きは約2時間で完了。
登録完了までのリアルタイムライン
| ステップ | 所要期間 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 購入・輸送手配 | 約1週間 | 約25万円(輸送+保険) |
| 海上輸送 | 約3〜4週間 | – |
| 通関・関税支払い | 約1〜2日 | 約35〜40万円 |
| 改善作業・予備検査 | 約1週間 | 約10〜15万円 |
| 陸運局登録・ナンバー交付 | 当日完了 | 約1万円前後 |
| 合計 | 約6〜8週間 | 約80〜90万円(車両価格別) |
実際にやってわかった3つの注意点
① 書類の不備は命取り
EPA/DOT証明やVIN記載ミスは再発行が難しい場合があります。購入時に書類をスキャンして事前確認することが鉄則です。
② 改善・検査は専門業者に任せるべき
光軸やメーター交換など、一見簡単そうに見える作業も、陸運局の基準に正確に合わせる技術が必要です。自作改造では再検査になるリスクが高いため、専門業者に依頼するのが安心です。
③ 費用は“見積もり+20%”を余裕資金に
輸送遅延や為替変動、改善追加など、予想外の出費が発生することがあります。事前に余裕を持った予算を組むことが重要です。
まとめ|登録はゴールであり、スタートライン
輸入ハーレーの登録手続きは、書類や検査、通関など一見複雑に見えますが、流れを理解すれば意外とシンプルです。ナンバーを受け取った瞬間、アメリカの風を感じるハーレーが正式に日本の道路を走り出す。その感動は、他では味わえない特別なものです。
輸入ハーレーの登録を検討している方は、この記事を参考に、ぜひその夢を実現してください。
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